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アニメ、テレビなどの感想や語り中心。現在更新停滞気味ですすみません。
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 僕の名前はマスノ。ビットワールドレスリング、略してRWWの選手…の片割れ。今はここ、ハラキンジムで日々、練習に汗水垂らしデビューの日を待ちわびている。
 で、このジムには僕やその他沢山の選手、コーチ以外にもう一人、それも女性がいる。このジムの会長のお嬢様だ。僕はその人のために毎日の辛い練習を乗り越えられているといっても過言ではない。直接言及するのは気恥ずかしいけど、これで何となく僕の心情は分かってもらえると思う。
 
 …と、噂をすればその彼女がやって来た。
 「おはよう。今日も頑張ってるわね、マスノ君」
 「はい。っておじょうさん何ですか、その格好…」
 僕の目に飛び込んできたのは、いつものいかにもお嬢様らしい服装ではなく、僕と同じ、ジャージ姿のアスミおじょうさんだった。その理由を彼女はこう述べる。
 「だって、毎日皆が頑張ってるのを見てると、私、いても立ってもいられなくなって…。さすがに試合には出られないけど、せめて皆の実践練習の相手になれればいいなあって」
 そう言いながらおじょうさんはシャドーボクシングを始めた。まだデビュー前の僕が言うのもなんだが、とにかく酷い。構えも、動きも、何もかも形になっていない。完全な素人の真似事だ。とりあえず、実践練習の相手になれる日は一生来ないだろう。
 「どう? なかなか様になってるでしょ?」
 「どうって言われても…」
 
 僕はこの先に続く言葉を言うのを一瞬渋った。けれど、真に彼女のことを思うなら…。
 
 「似合ってないですよ」
 「え?」
 「全然、似合ってないです。その格好も、その姿勢も。そんなんじゃ練習相手になんか絶対なりません」
 「そんな……私だって一生懸命頑張ろうとしてるだけなのに…酷いわ、マスノ君!」
 
 ああ、そんな顔でそんなこと言わないで…。僕だってアスミおじょうさんが努力しようとしてくれてるのはよく分かってるんです。でも……。
 
 「アスミおじょうさんは、いつものアスミおじょうさんじゃないとダメなんです」
 「いつもの…私?」
 「そうです。この場所に似つかわしくない女らしい格好して、僕達を陰から支えてくれて…それと何より…」
 そこで一旦言葉を切り、一呼吸おいてから、それまで下を向いて喋っていた僕はおじょうさんの方を見て、笑顔を向けた。
 「リングサイドで笑顔で応援してくれるおじょうさんが何よりの僕の…いえ、僕達の支えなんですから。だから、無理に練習相手なんかしなくていいんです」
 「マスノ君……」
 すると、おじょうさんは僕の方に歩み寄り、自身が肩にかけていたタオルで僕の顔を拭いた。
 「…汗だくじゃない。こまめに汗は拭かなきゃ。あと水分補給もね」
 急にそんな優しい顔されると困るんですけど…こんなに近付かれたことなかったから、心臓がバクバクいってるよ。
 「…それじゃまるで僕のお母さんみたいじゃないですか」
 「ふふ。悪い?」
 悪いことはないけど…お母さんじゃ結婚できな…っと、それはまだ気が早いか。というか、この場に及んで何を考えてるんだ僕は…。
 反省の意味も含めつつ、一度咳払いをした。おじょうさんには気づかれてないことを願う。まあ、心配は無用だろうけど。
 「…というか」
 「何?」
 「水分補給できてないのは、誰のせいだと思ってるんですか?」
 「あ……」
 「いつも朝一で水を準備するのは、おじょうさんの役目ですよね? もう雑用もこなせなくなっちゃったんですか?」
 「何ですってえー!?」
 水くらい自分で準備できるでしょ、と返されたらどうしようかと思ったが、どうやらそれも心配無用だったようだ。おじょうさんはあっさり僕の誘導に引っかかってくれた。
良かった、単純な人で。この時、心底そう感じた。
 
 だから、余計に守りたいって思うんだろうな。

 僕のそんな気持ちを知るはずもないアスミおじょうさんは、いつの間にやら冷静さを取り戻し、さっき汗を拭いたタオルを僕の肩にかけた。
 「タオルぐらいは自分で準備しなさいよ」
 「…良かった、タオルで」
 「何か言った?」
 「いえ、何でもありません!」
 「さて、私は早速水を…あ、そうだ!」
 ヤカンを手に取り台所へ向かっていた歩みを止め、彼女はくるりとこっちに振り向いた。
 「な、何ですか?」
 「言っとくけど、それ…タオル、まだ使ってなかったからね」
 おじょうさんはそう言って、少しむすっとした表情を浮かべた。
 
 えっと…つまり、自分が使ったタオルを人に使わせるのは悪いと思ったんだろうか。この場でそんなこと気にするなんて…やっぱり彼女はお嬢様だ。
 
 「大丈夫ですよ。有難うございます」
 僕は笑いが込み上げてくるのを必死に抑えて、お礼を言った。
 「でも、正直おじょうさんが使ったタオルでも…」
 「何よ?」
 「ああ、いや! 別に!」
 構わないですよ、と続けようとして慌てて止めた。そんなこと言ったら、気持ちに気付かれるどうこうより、おそらくこれからただの変態扱いにされてしまう。
 「…? 変な人ね」
 怪しい視線は感じられたが、おじょうさんはそのことに関してはそれっきり、何も言わなかった。けれど。
 「マスノ君」
 「はい?」
 まだ数秒前の余韻が残っていたせいか、僕の声は若干裏返っていた。
 「…デビュー戦、絶対、私の目の前で勝って」
 「おじょうさん…」
 「負けたら承知しないわよ」

 おじょうさんの笑顔。そうそう、これだ。僕にとって、一番の力になるもの。

 思わず僕も笑みがこぼれる。そして、こう返した。
 「まず、デビュー戦の相手が決まらないといけないですけどね」
 
 その日はきっと近い。根拠は無いけど、僕はその時、確信した。
 それでもって、絶対、貴方の目の前でガッツポーズを見せますよ、アスミおじょうさん。

おわり

参考HP→ビットワールド過去ページ 08年度コーナー放送回(笑)


続きからで色々語ってます。

拍手[4回]


初めての小説公開でしたが、いかがでしたでしょうか(笑)
最初から思いっきり通なところですみません・・・でも楽しかったです(←正直)

中学~高校の間は色々あって(笑)、小説書いてましたが大学に入ってからはぷっつり途絶えていたので、最初のうちは(書けるかなー・・・)と不安でした。が、書き始めたら何のその。文章力はどうあれ、何とか完成できて良かったです。

ちなみに、何故この二人でこの設定を選んだのかというと、題材的に圧倒的に書きやすかったのと私が単純にこのコーナーの升野さんのビジュアルが好きだからです(笑)描きやすいんだ、マスノは・・・かといって挿絵を入れるわけでもないこのセコさ。

今回はたまたまお題の1番からになりましたが、決して順番通りにはなりません;
ちなみに次のアップ可能性として一番高いのは10番です。 ま た ビ ッ ト か

だって書きやすいんだよ!orz

それでは、次回までさようなら。今月中にあと二つはアップしたいです
(※予定)
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